「生産を止めたら、その分だけ仕事が遅れる」。製造現場にいる人なら、誰もが一度はそう考えます。ところが今井メッキ工業所では、あえて週に1日ラインを止める決断をしました。すると不良品が大きく減ったのです。今回は、その「止める勇気」が現場に何をもたらしたのか、現場の声とともにお伝えします。
「止めない」が当たり前だった現場
めっきの工場は、止まらないことが美徳とされてきました。槽は温まったまま、ラインは動いたまま。注文に追われる毎日のなかで、設備を止めるという発想はなかなか出てきません。
けれど、動かし続けるからこそ見えなくなるものがあります。槽のわずかな汚れ、配管の小さな詰まり、治具の劣化。日々の生産のなかでは「あとでやろう」と後回しにされがちな、細かなメンテナンスです。
その小さな積み残しが、実はじわじわと品質に効いていました。色むら、厚みのばらつき、ピンホール。ひとつひとつは小さな不良でも、積み重なれば数字になって表れてきます。
思い切って、週に1日止めてみた
第47期、今井メッキは第3工場で思い切った取り組みを始めました。毎週金曜日を「計画停止の日」と定め、ラインを止めて、普段は手が回らない細かなメンテナンスに丸一日を使うことにしたのです。
最初は戸惑いもありました。「稼働日を1日減らして大丈夫なのか」。当然の不安です。けれど現場が実際にやってみると、これまで見過ごしていた箇所に、ていねいに手を入れられるようになりました。
槽の状態を整え、設備のコンディションを最良に保つ。普段の忙しさのなかでは「やりきれなかった」深いレベルのメンテナンスが、止めた1日によって初めて可能になったのです。
数字に表れた、はっきりとした成果
ものづくりの世界では、どれだけ工程を磨いても、一定の割合で不良はどうしても生まれます。それは製造業に共通する、避けて通れない現実です。大切なのは、その不良といかに向き合い、どこまで減らせるか。今井メッキは、この「不良を減らす」という一点に、本気で力を注いできました。
そして取り組みは、明確な数字となって返ってきました。全工場合計の不良を、前期比で約36%も減らすことに成功したのです。
なかでも変化が大きかったのが、計画停止に取り組んだ第3工場です。ニッケルめっきの回転ラインでは不良が約半分にまで減少。さらに第2工場の亜鉛ラインに至っては、前期比で約7割もの削減を実現しました。
「あえて1日休んだことが、いちばん効いた」。現場の実感は、そのまま数字に重なりました。止めることは、品質を守るための、もっとも確かな投資だったのです。
もうひとつの立役者──「商品ごとに最適化できる」自動機
成果を支えたのは、メンテナンスだけではありません。あわせて導入が進んだ、新しい自動機の存在も大きな要因でした。
今井メッキの自動機の強みは、ただ自動で同じ処理を繰り返すことではありません。一つひとつの商品に合わせて、めっきの付け方をオリジナルに設定できる点にあります。製品の形状や、お客様が求める仕様に応じて、最適な条件を一品ごとに作り込めるのです。
めっきは、同じ「ニッケルめっき」でも、対象となる製品によって最適な付け方が変わります。だからこそ、商品ごとに条件を細かく最適化できることが、品質のばらつきを抑える決め手になりました。
人の経験と勘が品質をつくるのは、めっきの世界では変わらぬ真実です。その勘どころを、商品ごとに最適化された自動機の制御が支える。新しい自動機が一品ごとに最適な条件を保ち、週1日のメンテナンスがその設備を最良の状態に保つ。機械と人、技術と手入れ。この両輪がかみ合ったことが、不良の大幅な削減につながったのです。
「凡事徹底」が支えるものづくり
今井メッキには「凡事徹底(ぼんじてってい)」という言葉があります。当たり前のことを、誰にも真似できないレベルでやりきる、という意味です。
週に1日ラインを止めて、地道にメンテナンスを重ねる。派手さはありません。けれど、その当たり前を徹底し続けたことが、不良の大幅な削減という成果につながりました。現場でこの取り組みを率いた担当者には、社内で表彰も贈られています。
止めた1日は、決して「仕事を止めた日」ではありませんでした。それは、品質を守り、お客様の信頼を守るための一日だったのです。一つの製品に会社の信用が宿る。今井メッキが大切にしてきたその考え方が、また一歩前に進みました。
おわりに
「止める勇気」が、結果として品質を高め、お客様の信頼につながる。今井メッキ工業所は、創業から57年、こうした地道な積み重ねを続けてきました。
めっきの品質や、安定した供給体制についてご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。一つひとつのご依頼に、ていねいに向き合ってまいります。
